巷で chatGPT の便利な使い方のエントリは溢れているため、何番煎じかという感じではありますが、個人的に便利(かつ他の手段で代替が効きづらい)と思ってる用法を 3 つほど紹介します。
リストのぬけもれ探し
チェックリストやソフトウェアの要件など、リストを網羅的に作ろうとする作業はしばしば発生します。こういった手動作成しているリストに対し「完全であるか = 抜けがないか」を自信を持って言えることは少なく、悪魔の証明的であると思います。
何かを手動でリストアップしているときに、リストに抜けがないかを chatGPT にチェックしてもらいます。ポイントとしては、人間がある程度リストアップしておき、それをそのまま伝えて「この方向性で洗い出してるこのリストの抜けを教えて」というふうに聞くことで、自分が想定しているリストアップの方向性を伝えるところだと思います。こうすることで違う方向のリストアップがされてしまうということが起こりづらいです。
実践例
画像の例では「Web サイトリリースの際にフロントエンド周辺で気をつけること(sitemap など必要だが忘れがちなものを予めチェックリストにしておきたかった)」という観点で手動でいくつかリストアップし、その上で chatGPT に抜けの補完をさせています。画像最適化やアクセシビリティ、canonical もサイト制作の際に考慮したほうが良いことですが、筆者のリストアップからは漏れていました。
他にもソフトウェア開発時の要件をいくつか出したあとに、足りないものを補完させるなどの使い方もできます。
この方法のメリット
リストアップという作業は、どうしても個人で行うと抜けの発生する限界のある作業だと思っています。知識や経験からそもそも知らないことは漏れてしまいますし、知っていてもリストアップという単調作業で思考がロックされてしまい、洗い出せないということもありえます。
従来だとこういった抜けの補完は「他人に見てもらう」「同じ方向性でリストアップしてる資料を探す」といった、不確実な方法しかなかったと思います。他人に見て貰う場合、すでにリストアップされたものを見てもらう関係で先入観に引っ張られ、結局抜けの指摘を完全にできないことも多いと思います。また同じ方向のリストもドンピシャのものが転がってるケースは稀だと思い、足りないものは自身で思案していくしかないと思われます。
chatGPT に補完作業をしてもらうことで、こうした問題をいくらか改善できています。すでに存在するリストの続きを持ってる情報から追記するというのは chatGPT に向いている作業でもあると思います。最終確認や lint 的に使うのもおすすめです。
概念は知っててそのものズバリが思い出せないときの逆引き
歳をとってくると記憶力が衰えてきて「こういう意味の単語や慣用句があったはずだけど(見たことあるはずだけど)、単語が出てこない」ということがしばしば発生すると思います。また、ソフトウェアのライブラリ名など「便利なやつがあったはずだけど、名前が思い出せなくて調べられない」といったことも発生すると思います。特に、日々増える情報をつまみ食い的に接種すると、概念としては覚えていても名前を覚えていないということはよくあるように思います。
こうした 「概念は理解しているが固有名詞が思い出せないもの」に対して、知ってる限りの概念を伝えて「単語名を教えて」と chatGPT に聞く ことで、ズバリの単語を返してもらいます。つまり単語の意味から名称の逆引きです。
実践例
以下は React のPortal機能について、普段使ったことなかった筆者が興味を持って調べようと思ったときに、知識としては何度か目にしたため知っていたが「Portal」という名前が思い出せず chatGPT に聞いたときの例です。
ソフトウェアの世界では概念に一般名詞をつけたり、個性的すぎる名前をつけたり、どちらにせよ記憶に残りづらいことが多々あります。しかし概念そもそもは有用そうだったりするため記憶には残りやすく、そういった場合に名称の方を思い出すのに便利です。
以下はngrokという名称が思い出せなかったときの例です。
また、慣用表現やことわざで「ドンピシャの表現があったはずなのに思い出せない!」というときにも使えます。以下は「ワークアラウンド」という単語をど忘れしたときの例です。
この方法のメリット
従来だと工夫して Google 検索するしかなかったところを、概念の言語化さえできれば chatGPT が教えてくれるため非常に便利です。「概念をつらつらと入力し、それに一致する概念を出力する」というのは chatGPT に向いている作業でもあると思います。
また、回答にしっくり来なくても「他の表現はありませんか?」と聞くことでしっくり来るまで無限に聞き続けることができます。
回答に雑学を混ぜさせる
Custom Instructions で「たまに関連のある雑学を混ぜて」と指定しておく ことで、質問に対して回答そのものだけではなく雑学も混ぜてもらいます。
実践例
上記の例では「ずんだ」の意味を聞いています。chatGPT は意味を教えてくれるついでで、「ずんだ餅の栄養価」「派生商品もあること」を教えてくれています。
この例で nginx での HSTS の設定法を聞いていますが、最後に「HSTS は PayPal のエンジニアが考案した」という情報を教えてくれています。この粒度の tips 的な話も教えてくれるようになるので便利です。
この方法のメリット
chatGPT はデフォルトではこちらの質問に対する回答をするだけですので、いわばこっちが求める回答を pull する使い方しかできません。この方法では「雑学を混ぜて」と予め指定することで、関連する情報の push をしてくるようになります。
この方法で真に有益な情報が push されることは少なくはありますが、そもそも何か知りたいことがある=なにかに興味を持って chatGPT に質問をしているので、そのときに push された関連情報は記憶に残りやすく、効率の良い情報摂取方法だと思っています。
おわりに
いくつか個人的に便利だと思っている chatGPT の利用法を紹介しました。
もちろん chatGPT なので、間違った情報を提示してくることもあるとは思いますが、結局のところ人間が教えてくれる情報も同じ程度の信頼性なんじゃないかなと思います。情報を教えてもらった上で、必要なものは自身で裏取りをしたほうがよいです。
そうしたデメリットを踏まえても、個人だと限界のある情報収集を効率的にしてくれるのが chatGPT の便利なところだと思います。